2011.01.15

犬の本:『マールのドア』

 
 

 最初にひとつ言わせてください――この本は傑作です。
 著者の鋭く深い観察眼と膨大な量の資料に裏打ちされた、ノンフィクションとしての魅力に溢れています。
 全米でベストセラーになったというのもむべなるかな。
 大自然を満喫して生きる一頭の犬マールとその飼い主である著者の珠玉の日々が、まるで大山脈で見るダイヤモンドダストのようにきらめいています。なかでも著者とマールの「会話」は絶品です。
 
 先日、ブクログに短い感想を書きました。
 ブクログユーザーのなかには、この本を読んで感想を書いた人はほかにいません。
 なんともったいない。
 犬、自然、ナチュラリスト、犬との絆……これらのキーワードに反応したくなる人はぜひぜひ読むべきです。

 実を言うと邦訳刊行前に原書を読みかけていましたが、冒頭数十ページを読んだところで仕事に忙殺され、読みさしのままでした。そのうちに訳書が出ていることに気づき、あらためて日本語版で読んで、もっと早く読めばよかったと悔やんだほどです。

 米国のみならず日本でもベストセラーになり、映画化もされた『マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたこと』 (ハヤカワ文庫NF)という、これまたすばらしい本がありましたが、ある意味、『マール』は『マーリー』より強くおすすめしたい本です。


 

***ブクログに載せた感想***
 
「あんたは犬を欲しがってる。それはボクだ。」――神秘的にすら思える出会いから始まった人と犬の種を超えた絆が紡いだ物語である。たんなる犬本でもなければ、メモワールでも、ネイチャー・ライティングでもない。そのすべての要素を融合させ、この本独自の世界を繰り広げているといっていい。

 人と暮らしながらも束縛を嫌い、大自然のなかでの自由を謳歌するマールのために、著者は自宅に犬用ドアを取りつけた。それはマール自身が人間社会と大自然のあいだを行き来するための扉であり、著者にとってもそんなマールの五感を通じて外の世界を疑似体験する扉であった。

 犬はペットではなくコンパニオン・アニマルだという議論がある。犬の飼い主のひとりとしてその意見に異論はないが、敢えて口を挟むなら、犬はただひたすらに犬であり、飼い主にとってはポチであり、ハナコであり、ジョンやリリーである。そして、本書の著者にとってはマールはマールであり、共に過ごした日々の相棒である。それ以上でもそれ以下でもない。

 数多く出版される犬本のなかでも、特筆すべき名著だと思う。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。そして著者が記したマールの声に耳を傾けてほしい。
 
 
 
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2010.11.21

『エンダル』の感想

 今月刊行になったばかりの『エンダル』ですが、ネット書店アマゾンでは、もうカスタマーレビューが掲載されました。

『エンダル』カスタマーレビュー

 担当編集者と訳者が「いい本ですよね!」と語りながら、ときに泣きながら仕上げて世に送り出した本にこめたメッセージが、しっかり伝わったと確信できるレビューでした。

 引き続き『エンダル』をよろしくお願いいたします。

 
 
 
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2010.11.13

訳した本:『エンダル』

  介助犬との日々を綴ったイギリス発ノンフィクション。

 武器システムの設計をまかされるような有能な海軍兵士だった男性が、不慮の事故で車いす生活となり、そのうえ脳の記憶を司る部分に重い障害を負った。一時は自殺をも考えた彼と、壊れていく家庭を救ったのが介助犬エンダルだった。

 このエンダル、驚くことにATMでお金を引き出せる。もちろん暗証番号は人間が打ちこむが、カードをスロットに入れたり、お札を回収することができるのだ。そのほかにもふつうの介助犬では考えられない仕事をこなすので、イギリスではドキュメンタリーがTV放送され、いま映画を制作中とのこと。

 担当の編集者と何度もやりとりしながら、何度か泣きながら訳した本です。訳書にはどれも愛着がありますが、今回はとりわけみなさんに読んでいただきたい本に仕上がりました。お手にとっていただければ幸いです。

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2010.06.03

犬の本『ぼくの名はチェット』


 
 
 5月末に東京創元社から刊行になった『ぼくの名はチェット』(スペンサー・クイン著、古草秀子訳)をいただきました。関係者のみなさま、ありがとうございました。


 わたし、実はこの作品を一足お先に原書で読んでいまして、翻訳ミステリー大賞シンジケートの原書レビュー企画で原稿を書かせていただいたのですが、いやあ、もう実に実におもしろい犬ミステリです。こんな作品を日本の出版社が放っておくはずはない!

 案の定、レビュー執筆と同時期に「東京創元社から訳書がでるらしい」と知らせがはいり、あのおもしろさを日本の読者にも伝えられるとわくわくしながら待っていました。

 ちょっとさえない探偵バーニーと名犬チェットが、ある女子高生の失踪事件の調査にのりだす。ところが、それはただの失踪ではないらしいとわかったあたりから、ひとりと一匹は事件の深味にずるずると引きずりこまれ……というあらすじは、翻訳ミステリー大賞シンジケートの原書レビューを読んでいただくとして、この作品の魅力はなんといってもチェットの視点で物語が進行していること。警察犬訓練所で優秀な成績をおさめた(が、とある事情で卒業しそこなった)チェットですから、名犬、賢犬なわけです。

 が、悲しいかな、犬は犬。本能を消し去ることはできず、食べものにつられてしまったり、つい穴を掘ってしまったり。そんな本能のおかげで窮地に立たされることもあれば、鋭い嗅覚のおかげで事態の打開につながることもあり。

 名犬なのか、迷犬なのか、チェットのとぼけた味わいのナレーションにはまってしまうことうけあい。犬好きのかたも、そうでないかたも、ぜひぜひご一読を。

 翻訳ミステリー大賞シンジケート書評七福神の今月の一冊のなかで、川出正樹さんが5月のベストに推しています。こちらのページもぜひチェックしてくださいね。
 
 

dogわが家の迷犬はお昼寝中! クリックしてくれると嬉しいなdog 
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2010.05.27

シーザー・ミラン再び!

 以前このブログでも紹介し、ひところNHKで放送されたアメリカのカリスマ・ドッグトレーナー、シーザー・ミランの番組が、今度はナショナルジオグラフィック・チャンネルに登場します! 初回は6月7日の21時で、4日連続の放送です。詳細はこちらで↓↓↓

 ザ・カリスマ ドッグトレーナー ~犬の気持ち、わかります~(原題:Dog Whisperer)

 犬を飼っているかた、愛犬の困ったちゃんな行動に悩んでいるかた、ドッグ・トレーナーを目指しているかた……などなど、ぜひ一度ご覧ください。

 ついでに拙訳『あなたの犬は幸せですか』(シーザー・ミラン著、講談社)もお読みいただければ、シーザーの考えかたがなおわかりやすいかと思います。刊行時の日記はこちらで
 



 
 

cloverシーザーさん、ビビリ犬なわが家の甲斐犬はどうしたらいいでしょう?clover  
 
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2010.04.15

犬の本『介助犬』

 盲導犬に比べると、まだ絶対数が少なく、社会的認知度が低い介助犬。

 介助犬、service dogは、ただ落としたものを拾ってくれるだけの犬ではありません。まさしくそのserviceの範囲は広く、車椅子のユーザーが自宅で転倒したら、外部に知らせるためのシグナルを出すのはもちろん、場合によっては犬の体を支えにして(!)起きあがってもらうことも仕事のうちなのです。

 外出するユーザーのガイド役、guide dogである盲導犬と違い、介助犬が担う仕事はユーザーによって大きく違う点に育成の難しさがあり、普及が伸び悩む一因だということに改めて気づかされました。

 医師であり、日本介助犬アカデミー専務理事である著者による、わかりやすい現状分析と問題提起がなされています。介助犬を含む補助犬全般に興味のあるかたには、ぜひ読んでいただきたい本です。
 
 
 
 
 
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2009.11.02

犬の本『眠る1分前に見るわんこの笑顔』

 
 
 

 人気ブログのわんこたちが大集合した『眠る1分前に見るわんこの笑顔』(サンマーク出版編集部編)をいただきました。関係者のみなさま、ありがとうございました!

 ボーダーコリーの銀くん、凛桜ちゃんにはじまり、トイプードルのもぐくん、みるくちゃん、ジャック・ラッセルのロッタくん、スピッツのワチリーくん、秋田犬のさくらちゃん……と、各ブログランキングなどで知られている、和洋さまざまなわんこの笑顔を集めたフォトブックです。わたしが愛読しているブログのサモエドのクローカくんもいました!

 自宅でのおくつろぎ写真や、お散歩時の社交中の写真など、飼い主でなければ撮れない自然な表情が満載。(奥付によると、飼い主さんの写真提供・撮影協力ありとのこと)各ブログのファンのかたはもちろん、眠る1分前にほんわかしたいかたは、ぜひどうぞ。かわいいわんこの笑顔、癒されますよ。

 
 
 
 
 
ちょっとサボリ気味ですが、またわんこ本をご紹介します。
クリックありがとうございますdog
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2009.07.23

犬の本『フェイス――二本足で生きる犬』

 
 
 

 生まれつき前足のない犬の話――海外のネット書店でこの本の原書を見つけたとき、わたしには読めない本だと思いました。犬の本を読むとき、どこかで凛と重ね合わせてしまう。そして、ほんとうは考えたくないけれど、愛犬の病気も別れも、心のどこかでいつか来るものと思っています。だけど、生まれつき障害を持っている愛犬の姿は想像できない。犬といえば、走る、食べる、寝る……だけで一日の大半が過ぎていきます。その犬から走ることを奪うなんて、年老いたわけでもないのに走れない姿を思い浮かべるなんて無理だと思ったのです。

 でも、しばらくして邦訳が出ると知り、あらためて動画サイトでこの犬、フェイスを見つけたとき、わたしの考えは変わりました。なんとフェイスは後ろ足だけで走っています。それも、実に嬉しそうに! かわいそうとか、悲惨とか、そんな言葉はまったく似あいません。この動画を見れば、フェイスが全米のさまざまなメディアに取りあげられ、多くの人を魅了した理由がわかると思います。 
 
 
 



 
 
 
 Faith(信念)と名づけられたこの子は、並はずれたヴァイタリティで周囲の人を引きつけ、癒し、励まします。後ろ足だけの二足歩行、いや、歩行というよりカンガルーのように跳んでいるようにも見えます。ふふふ、なんて楽しそうなんだろう!

 障害を持ち、生まれてすぐに死にかけたフェイス。すんでのところで助けられ、著者一家に引き取られなければ、フェイスが全米の人気者になることもありませんでした。前足がないからと障害犬として地味な生活を送らせるのではなく、後ろ足だけで立つことを教えた飼い主のポジティヴ・シンキングにも勇気づけられました。

 日本では犬を飼うと決めたとき、ペットショップで好きな犬種を選ぶ人が多いでしょう。それを全面的に否定するわけではありませんが、犬も生きものである以上、障害を持って生まれてくることもあるはず。ただ、見た目でわからなければ、そのままペットショップのウインドーに連れてこられるかもしれません。でも、明らかな障害を持っているときは?
 まちがいなくペットショップには来ないでしょう。となると、そんな犬はフェイスのように優しい家族に出会う幸運を期待できるのでしょうか。

 日本のペット産業の裏側についても、ちょっぴり考えてしまう一冊でした。
 
 
 
 
 
 
 
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2009.06.12

犬の本『ポチのひみつ』


 
 
 犬の本を集めていると、ジャケ買いしてしまうこともたびたび。片野ゆか著『ポチのひみつ』も、そんな本の一冊です。(上目づかい気味の視線は反則だ!)

「忠犬ハチ公」や「西郷さんの犬」といった実在した犬から、「花咲かじいさんの犬」に「いぬのおまわりさん」と有名犬の秘密を追ったルポ。ハチ公の意外な素顔も、いぬのおまわりさんが生まれた経緯もはじめて知る話があったけれど、個人的には「西郷さんの犬」にぐいっとリードを引っぱられました。

 というのも、この本を読みはじめる2、3日前、ケーブルテレビで再放送されていた大河ドラマ『翔ぶが如く』をたまたま観て、西郷さんの犬に目を奪われたのです。それは、西郷さんが犬たちを連れて山に狩りをしにいくシーンでした。敏捷で、深い藪も急勾配もものともせず、まるで西郷さん役の西田敏行の飼い犬であるかのように山を疾走する犬は、体躯のバランスといい、耳の立ちぐあいといい、まさしく甲斐犬。

「おお~、こんなところに甲斐犬が使われている!」

……と喜んだのもつかの間。この本を読んで、あのシーンの犬は、いまは数十匹程度しかいない薩摩犬だと知りました。なんだ、甲斐犬じゃないのかと、ちょっぴりがっかり。

 それでも、一度は絶滅したと言われた薩摩犬が、熱心な愛好家たちの努力によって復活を遂げたくだりは興味深かったです。かつて日本は地方ごとにその土地の犬がいたといいます。まさしく、それを実感する話でした。

 もともと『小説すばる』に不定期連載された内容を書籍にまとめたものだそうですが、著者あとがきにもあるとおり、「取材をしてみないとどんな内容になるのかわからない、原稿がいつできるかもわからないという不確定要素タップリの内容」の企画を通した、連載当時の『小説すばる』編集部の度量の広さ、懐の深さにも感心しました。


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2009.06.09

犬の本『ホテル・フォー・ドッグズ』

 子どものころ、よく犬を拾ってきては親に嫌がられました。だいたいは白や薄茶色の和犬の雑種。ときには子犬のこともありました。和犬の子犬ってね、それはもう、ひたすらかわいい。成犬になると精悍な顔になる犬も、子犬のうちは、ただただむくむく、ころころしていて、抱いているだけで幸せな気分になれる。ほとんどは親がタウン情報紙に出した「犬、保護しています」のお知らせを見たり、口コミを聞いて、飼い主さんが連れ戻しに来たのだれど、それまでのあいだ、わたしはちょっとケモノくさい被毛に鼻を埋めてニマニマ。でも、同時に「明日はお迎えが来るかもしれない」と怯えていました。

 そんな幼き日のあれやこれやを思い出させてくれたのが、この『ホテル・フォー・ドッグズ』です。父親の転勤のため、一時的にアリスおばさんの家に厄介になっているウォーカー一家。11歳のブルースと10歳のアンディの兄妹が捨て犬を拾いますが、なにぶん居候の身、犬を飼うことを許してもらえません。しかもおばさんは犬アレルギー! 困った兄妹は、なんとか拾った犬を飼うために知恵を絞りますが、どんどん話が大きくなり……

 原作は1971年の刊行だそうですが、ちっとも古びていません。小さな生きもの(作品には超大型犬も出てきますが!)への愛情、兄と妹の絆、友情、子どもだけの力で大きなことを成し遂げる実行力――自宅のすぐ近くで大きな冒険に挑んだ子どもたちの姿が、実に生き生きと描かれています。そうそう、子どものとき、こんなことにドキドキして、あんなことにヒヤヒヤしたよね! 懐かしいなぁ。がんばれ、ブルース! 負けるな、アンディ!

 Dreamworks製作で映画化されたとか。著者はヤングアダルト分野で評価されている書き手ですが、こんな楽しい作品を子どもだけに読ませておくのはモッタイナイ! かつて子どもだった大人たちも、ぜひ楽しんでください。本の扉をひらいたら、あっという間に子ども時代に戻れますよ。


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