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2005.10.11

教師

 高校の入学式を控えたある日のこと、わたしの親とつきあいのあったある高校の先生から電話をもらいました。その先生(仮にA先生としましょう)は、自分がこれから1年間担任を持つクラスのなかにわたしと同じ中学出身の男子生徒Bくんがいるので、「彼がどういう生徒なのか知りたくて」電話をかけた、と言いました。

 父親が教員で、自宅は父の同僚のたまり場だったので、わたしは「先生」をごく間近に見て育ちました。ときには、PTAにはこんな姿を見せられないだろうなと思う先生もいましたが、多くの先生はわが家に集まる大好きな優しいおじさん、おばさんたちでした。

 その教師という人種に深く失望したのは、十五の春をなんとかのりきったあの日の電話がきっかけでした。

 中学時代、わたしの同期と1年上の男子生徒たちのあいだである問題が起こり、全国紙に小さな記事が載りました。A先生は自分が担任を持つ生徒がその事件にかかわったかどうか、日ごろの生活態度はどうなのかを知りたがったのです。「あなたから見て彼はどんな同級生だったか」と。

 あのとき名指しされたBくんがその事件にいくらかかかわっていたのは知っていましたし、中学校の先生や同級生たちが彼をどんな目で見ていたかもよくわかっていました。そもそもわたし自身、彼と違う高校に進み、せいせいしていました。

 それでも、内申書からは読めないBくんのふだんの姿をA先生に話す気にはなれませんでした。ベテラン教師なんだから、あの程度のツッパリが来てもあたふたせず、どーんと構えていてよ――そんな生意気な批判がBくんへの嫌悪感に勝ったのです。

 だって中学時代に悪ガキだったとしても、ひょっとしたら高校入学と同時に心を入れ替えるかもしれないじゃありませんか。それなのにはじめから色眼鏡で見られたら、生徒はぜったいに救われない。

 勉強にしろスポーツにしろ、どんなに先生が指導したところで、最終的には生徒ひとりひとりが自力で道を切りひらいていかなければなりません。その道筋をつけたり、目標を達成するためのヒントを与えるのが教師ではないかと思います。

 わたしはいままで多くのすばらしい先生に出会いましたし、いまも連絡をとりつづけている小学校時代の恩師もいます。大学で教職課程を履修し、自分が卒業した高校で教育実習も経験して、短期間でしたが教師という仕事のやりがいも感じました。けれども、けっきょく教員採用試験を受けなかったのは、十五の春の失望があまりに大きかったせいです。

 教育現場の実情を知らない者の戯言だと思われるかもしれません。でも、先生はなるべくまっさらな状態で新しい生徒を受け入れてほしい。知人の娘に電話してまで、事前に素行調査をするような先生でいてほしくない――先日、教職の難しさ、現場が抱える問題を聞く機会があり、そんなことをつらつらと考えました。

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