« 伝える | Main | 2年ぶりの »

2004.06.09

真夏の夜の悪夢

 一度だけ緊急電話番号に電話をかけたことがあります。真夏の蒸し暑い夜でした。当時住んでいたのは横浜北部の住宅街にある4階建て賃貸マンションの1階。夜遅くまで読書をしたあとの寝入りばな、共用廊下に面していたわが家の寝室の窓を誰かがこじ開けようとしていました。

 真夜中。家のなかにはわたしひとりだけ。不審者は道具を使って、外からクレセント錠を開けようとしています。部屋の明かりをつけて住人が起きたことを示しても、逃げる気配はありません。それどころか、以前より激しくぎこぎこと世にも恐ろしい音がきこえてきます。寝室の窓は面格子がはまっていたので、そう簡単には室内には入れないはず。でも、寝室と反対側にある居間のベランダの錠をあけられたら……身も凍る思いとはこのことかと思いました。

 わたしは枕元においてあった電話の子機をひったくるようにつかむと、震える指で警察に電話をかけようとしました。あまりのパニックで、110番なのか101番なのか、111番なのか、自分のかけたい番号がわからなくなっています。でも、一度目で正しい番号にかかりました。どうやら頭がパニックでも、指先が無意識のうちに「1・1・0」とボタンを押したようです。ところが、今度はオペレーターの質問にまともに答えられません。自宅の住所を何度か言い直し、電話番号を忘れ、家にいるのはあなたひとりですかという質問に「はい、いいえ、はい――」と答えにならない答えを返す。頭が真っ白になっていました。

 通報から10分足らずで神奈川県警のお巡りさんが3人来てくれました。あのときほど安堵したことはありません。けっきょく不審者はつかまらなかったのですが、その一件から数日間、ときどき近所の交番のお巡りさんがわたしのマンションを巡回してくれました。巡回のたびに、変わったことはありませんかと声をかけてくれたお巡りさん、その節はありがとうございました。賃貸マンションでもできる防犯対策のアドバイス、ほんとうにありがたかったです。

 その後、神奈川県警の不祥事が相次いで報道されたときはひどく落胆しました。わが家に来てくれたあのお巡りさんたちを、連日マスコミを賑わす神奈川県警という同じくくりに入れるのはためらわれました。

 札幌も夏の暑さがすぐそこまで来ています。ほんの少しの窓のすきまが狙われるこの季節になると、わたしは数年前のあの夜の恐怖と安堵を思い出します。

|

« 伝える | Main | 2年ぶりの »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/27759/738356

Listed below are links to weblogs that reference 真夏の夜の悪夢:

« 伝える | Main | 2年ぶりの »