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2004.05.28

歯のない年齢

 ここのところ、まじめに歯科医院に通っています。でも、歯を削るときのキーンという機械の音と口のなかに水分が飛び散る感じが大嫌い(好きな人はあまりいないと思うけれど)。歯科医院のなかに足を踏み入れるたびに、子どものころ神経を抜く治療をしたときに「痛い!」といえないくらい痛い思いをした恐怖が蘇ります。以来、歯科医院は虫歯が痛いとか、詰めものがはずれたとか、何かトラブルがないかぎり、できるだけ近寄りたくない場所でした。

 昨秋、その「何か」が起こり、やむなく歯医者さんのお世話になりました。以前通っていた新宿の歯科医院の先生はなんだか乱暴だったし、うーんと昔、札幌でおつとめしていたころに通っていた歯科医院の先生は優しくて、親知らずもうまいぐあいに抜いてくださったけれど、悲しいことに名前を忘れてしまっています。症状の悪化と治療の痛みを想像しただけで心細いのに、また怒りっぽい先生にあたったらいやだなあ、一応仕事を抱えている身だし、予約診療とは名ばかりのやたらと待たせる医院も困る。はて、どうしよう。
 こうなったら口コミに頼るしかありません。札幌在住のありとあらゆる友だちに、「お勧めの歯医者さんを教えて!」とメールしました。そのとき大学時代からの友人に教えてもらったのが、いま通っている歯科医院です。時計台に近く、治療の帰りに書店で仕事の資料を買ったり、デパ地下で夕食の材料を買ってくることもできる。これは願ったりかなったり。長いつきあいの友人の紹介という安心感もあり、すぐにその医院に決めて予約を入れました。

 そのときのトラブルは痛みの「い」の字も感じないうちに、あっというまに治療終了。完全予約制ですので、待ち時間ゼロです。問題箇所の治療のほか、歯茎を引き締めるための歯ブラシ指導もしていただき、ああ、この歯科医院なら……と思い、「半年以内に歯の健康診断にいらっしゃい」という先生のお話に従って、半年後、医院を再訪しました。
 半年間の歯茎マッサージが功を奏し、少し腫れ気味だった歯茎がきれいなピンク色になっていました。「つぎは噛みあわせを治していきましょう」と先生。
 え、噛みあわせ? 前歯は比較的きちんと歯が並んでいるので、自分の噛みあわせに治療が必要だとは思いもしませんでした。けれども先生が指摘する奥歯の問題点には、確かに思いあたることがあります。自分の歯の大きさや並びかたにすっかり慣れているので、問題があると気づいていなかっただけなのですね。
 それから通院すること10回。きのう、右の上下の奥歯の治療がほぼ終了しました。いびつな形を整え、上下の歯でしっかり噛めるように治療した歯のすばらしいこと! 奥歯が食べものをすりつぶす感触を生まれてはじめて味わったような気さえしました。

「片山さん、歯があるのは口ですね。食べものをとりいれる口は人間の命なんですよ。“命”という字から“口”をとったらどうなります? そう、年齢の“齢”の略字“令”になりますね。つまり、“歯”のない年齢になってしまうんです。もちろん、年をとっても入れ歯で食べたり、病気をしてもチューブから栄養をとることができます。だけどね、自分の歯でしっかり噛んで食べることが何にもまさるエネルギーの源であり、長生きの秘訣なんですよ……」

 とおっしゃる先生によると、噛みあわせなど歯全体のバランスを考えた治療は時間も手間もかかるので、外から見てわかるほど歯並びが悪くないかぎり、歯科医側も患者側も治療したがらないケースが少なくないそうです。
 でも、右側の噛みあわせが改善されたいま、わたしは左側の治療が待ち遠しくてしかたありません。むむ、どうしたんだ。あんなに歯医者さんが嫌いだったのに。

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