嘘
思えば
それは最初からそこにあった
言葉の端々に
ふとした瞬間にそれは現れた
急に湧いてでたのではなく
何重もの 膜や仮面に覆われて
表面上は 見えなくなっていたものが
ときおり 猛々しく踏みつけてくる
もはや 違和感ではすまされない
もっと激しく 徹底的に
抗うべきものだと 思い知らされた
思えば
それは最初からそこにあった
言葉の端々に
ふとした瞬間にそれは現れた
急に湧いてでたのではなく
何重もの 膜や仮面に覆われて
表面上は 見えなくなっていたものが
ときおり 猛々しく踏みつけてくる
もはや 違和感ではすまされない
もっと激しく 徹底的に
抗うべきものだと 思い知らされた
フェミニズムの潮流
別に女性の権利を声高に主張するつもりはないし、男性をやりこめようなんてつもりも毛頭ない。でも、一連の医大入試のニュースでは現実をつきつけられて、心底がっかりした。そんな噂はわたしが大学受験生だったウン十年前にすでにあったから、うっすらと感じてはいたけれど。同時に現役で、あるいは一浪二浪して医学部に合格した高校の同期や先輩後輩の顔が思い浮かんだ。たしか五浪くらいした医大生とアルバイトでご一緒したこともある。彼らはいまどんな思いでいるだろう。何をいまさらと思っているだろうか。
そんななんとなくくさくさした気分のところに、一冊一冊を丁寧につくっておられる印象を持っていた版元から本書が刊行された。海外学会に参加する機中で一気読みする。『フェミニスト・ファイト・クラブ』という勇ましいタイトルながら、ユーモアたっぷりに「戦い方」を示す好著だった。
まず、目次からしておもしろい。
Part 1 敵を知る こんな態度に気をつけよう
Part 2 自分を知る 自分で自分をダメにする女性について
Part 3 思わぬ落とし穴 「典型的な言われ方」を把握し、うまく対処する方法
Part 4 自分の言葉で話す 「とんでもない」しゃべり方をしないために
Part 5 ふざけるな。給料を払え 交渉用トラの巻
Part 6 男性ならどうする? いいところは貪欲に盗もう
見てのとおり、女性なら誰もが経験しそうな社会のあれこれについて、ユーモラスに実態を記述し、その対策法を紹介しているのだ。
各パートには「大人の女は泣かない? そういう歌は、間違いなく男が書いた」とか、「男の辞書に染まらない『用語ハンドブック』」とか、「その正体は?:まことしやかなことを言うヤツの見分け方」などなど、ああ、20代の自分に読ませてあげたかったと思うことが書かれている。
#MeTooなんてムーブメントが起こったりして、現代はフェミニズムに新しい流れが生まれたようには見える。ほんとうにそうだろうか。
もちろん、女性が味わっている被差別を表に出すことは大切だ。けれども、世の中はあいかわらず男性医師が多く、女性閣僚が少なくて、保育園探しに走りまわったり、子育てに悩んだり、介護を主に担うのは女性だ。生物学的な性の役割は変えられないけれど、それ以上のことを女性性が担っている現実を変えるには、女性擁護ではなく人権擁護の視点に立たねばならないのではないだろうか。
少子化で生じた労働力不足を外国人で補うのも一手だろう。でも、女性が結婚して子どもを持っても働きやすい社会にすれば、この問題の何割かは改善される。もちろん、そのためには保育園の待機児童ゼロや希望通りの介護を受けられるシステムを実現させるだけではなく、そもそも男性が家事や育児、介護を自分のこととして自然に考えられる世の中でなければならない。つまり、社会のシステムというハード面と、わたしたちひとりひとりの心の持ちようというソフト面の両方を変えなければならない。
わたしにとってのフェミニズムは、女性の権利を主張することではない。女性も男性も同じ権利を持っていて、同じ義務をシェアすることだと考えている。ガラスの天井を破るのではなく、そもそもガラスの天井をつくらない、すでに天井があるのならみんなで協力して外すのが新しいフェミニズムの潮流ではないだろうか。そう、フェミニズムは女性だけのものではない。社会全体で考えるべきことなのだ。
この考えに賛同していただける? だったら、本書はそんなかたの胸にすとんと落ちる爽快な一冊である。
イベントのお知らせです。
翻訳者4人で立ちあげたトーク・イベント『しましょう、本の話』の2回目を9月28日19時から開催します。
わたしはブレア元英国首相のスピーチライターが書いた本をとりあげ、「言葉の力」について話す予定です。
来てね!
詳細はこちら
《ミステリマガジン》3月号の〈洋書案内〉を執筆しました。
今回紹介したのはSarah Hilaryのマーニー・ローム警部シリーズ1作目、"Someone Else's Skin"です。
拙訳新刊『大学では教えてくれないビジネスの真実』(アレクサンドラ・レヴィット著、アルファポリス)が刊行になりました。
就職するということはどういうことなのか、ビジネス界で生き残るにはどうすればいいのかなど、就職先を決める前に知っておいたほうがいいことについて解説しています。これから就職活動をする人や、いままさに就職活動中の人など大学生にぜひ読んでいただきたい本です。それから、大卒後就職はしたけれど、こんなはずではなかったと思っている社会人にも。読者に大学生から20代の社会人までを想定したアドバイス満載です。
翻訳ミステリー大賞シンジケートに執筆しました。 RT @Honyaku_Mystery: [【原書レビュー】え、こんな作品が未訳なの!?【毎月更新】]第六十回はカレン・ジョイ・ファウラーの巻(執筆者・片山奈緒美) d.hatena.ne.jp/honyakumystery… via ついっぷる
『親の「その一言」がわが子の将来を決める 幼・小学生篇』マデリーン・レヴィン著(新潮社)
学歴どまりの残念な子か、学びが自立につながる子か。
高学歴、高収入の親こそ危ない!
健全で自立した子に育てるために〈親がするべきこと〉〈親がしてはいけないこと〉を実戦的にアドバイスします。
『親の「その一言」がわが子の将来を決める 中・高校生篇』マデリーン・レヴィン著(新潮社)
その「成功観」がわが子を潰す!
中高生の難しい思春期を乗り越えて、親自身の成功観を見直し、家族で価値観を共有する具体的手法をアドバイスします。
いずれもどうぞご贔屓に。
最近の仕事:《ミステリマガジン》9月号〈洋書案内〉で"Murder Sends a Postcard" by Christy Fifield を紹介しました。
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